国際刑事裁判所(ICC)と日本 for KIDS!

2007年12月、日本からICCのさいばんかんが誕生しました!(^o^y

回答その1!「加盟」って?

小三の息子は加盟ということの意味がまずよく掴めないようでしたが、私が読んだ内容について耳は傾けてくれました。それからICCてなに?と何度も聞かれました。

きょうかさんの息子さんから質問があったので、特別に簡単にお答えしましょう!

「加盟」(かめい)は、団体に加わることを意味します。条約によってつくられる国際刑事裁判所(こくさいけいじさいばんしょ=ICC)は、国の集まりなので、ひとつの「団体」と考えることができます。国連も、そういう団体ですね。ですから、この団体に加わることや、参加することを「加盟する」というのです。日本がICCに加盟するということは、日本がICCに加わることを意味するわけですね。
「加盟」の意味はわかりましたか?では、次の質問に移ります!

解説その7!日本の立場はどうなの?(2)

「その6」でお話したように、日本は、国としてはICCに正式に賛成できなくても、ICCのアイディア、考え方は支持していました。そして、2003年にICCが正式に発足するまで、そしてそれ以降(いこう:~の後)も、ずっとICCを支持し続けてきたのです。では、日本はどのようにしてICCを支持してきたのでしょうか?

●どうやってICCを支持してきたの?:ASPとの関わり

私たちの日本は、ICCを作るローマ規程の採択では署名はしませんでしたが、それからもずっと、ICCを本格的に作るためのPrepCom(プレップコム:準備委員会)という会議に参加してきました。国として正式に「署名」という行為(こうい:行いのこと)を行えない事情があっても、ICCの考えは支持しているのだから、こういった会議にもちゃんと参加しようと思い、積極的に参加して行ったのです。この会議への参加は、ICCが正式に発足する2003年まで続けられました。日本は会議のなかで、日本が提案できることを何でも提案してきました。そしてその提案は、現在のICCのあり方にもちゃんと反映(はんえい:表されて)されているのです。
注意:2003年以降は、準備について話し合うPrepComではなくASP(エーエスピー:締約国会議(ていやくこくかいぎ)という会議が開かれます。この会議はICCの締約国のうち、2002年7月1日の条約発効日までにローマ規程に批准(ひじゅん:意味はコチラ!)した国だけが、投票する権利を持つ全体の会議で、104カ国の国が参加しています。
日本は当然、投票権を持つ締約国ではありません。でも、ASPにはオブザーバー制度というものがあって、会議で投票はできないけど発言することができる権利を与えられています。つまり、日本はASPの正式な一員ではありませんが、会議に参加して、発言することもできるのです。ここでも日本は積極的に提案を行ってきました。結局、PrepComがなくなっても日本はずっと積極的にICCに関わってきたわけです。

日本がICCを支持するためにしてきたことは、まだまだありますよ。
ですから、皆さんも誇りをもって、日本のICC加盟を応援してくださいね!

次回は、ASP以外で日本がどうやってICCを支持してきたかを説明します。

解説その6!日本の立場はどうなの?(1)

ローマ規程(「規程」の意味はコチラ!)がどんなものかがよーくわかったところで、この素晴らしいローマ規程に対する私たちの国、日本の立場がどうだったかを、簡単におさらいしてみましょう。

●おととしまでの日本の立場

ICCを設立するためのローマ規程は、1998年、イタリアのローマで139カ国からの署名をもらって採択(さいたく:賛成して選んで、採用すること)されました。しかし、日本はこのとき、139カ国の中に含まれていませんでした。つまり賛成しなかったのです。でも、反対票を入れたわけじゃないので、いまでも、ICCに反対した国としてはカウントされていません。このとき、本当に反対したのは、アメリカ、中国、イスラエルイラクリビアカタール、イエメンの7カ国です。

日本がこのときICCに賛成できなかったのには、理由がありました。それは、当時は日本は自衛隊(じえいたい)を海外に派遣(はけん)することもあまりなく、ICCが主に軍隊(ぐんたい)を持つ国に対するルールブックだったので、軍隊を持たない日本がICCに賛成してよいのかどうか、決めることができなかったからなのです。軍隊を持たない国なのに、軍隊を持つことを前提(ぜんてい:土台となる条件)とするローマ規程に賛成したら、国民を裏切ってしまうと思ったからです。

日本は、日本国憲法(けんぽう: 国の基本的な決めごとを定めた国の中で一番上に位置する法律)の第9条で、二度と戦争しないこと、二度と軍隊を持たないことを約束しています。だから、戦争もしないし軍隊も持たないはずの日本が、軍隊の行動をしばるローマ規程に賛成するのはおかしいんじゃないか。そんな風に、当時は考えられていたのです。

結局、日本はそれ以降、ローマ規程に署名することはなく、2000年の大晦日に署名期限(きげん:前もって決めてある日にち。〆切のようなもの)が切れてしまい、日本は署名国にカウントされなくなってしまったのです。

でも日本は、国としてはICCに正式に賛成できなくても、ICCのアイディア、考え方は支持していました。だから日本は、署名期限が過ぎた後も、ICCが発足(ほっそく:団体が作られて、活動を開始すること)する2003年まで、積極的(せっきょくてき)に、ICCの活動を支持してきました。

どうやって?

それは、また次回、お話しましょう。

解説その5!『ローマ規程』の狙いは何?

●ローマ規程の狙い:普遍的管轄権の成立

「普遍的(ふへんてき)」とは、普遍であること、つまりすべてのものに当てはまること=共通であることを意味します。

「管轄権(かんかつけん)」は、「司法管轄権」の説明にも出てきましたが、あるものを管轄(扱ったり、支配))する権利を意味します。つまり、司法に対する管轄権を持っている場合は、自分たちで作った法律を守ったり実行する権利を持っていることになります。

この二つの言葉が合わさって、「普遍的管轄権」つまり、すべてのものに共通で、支配したり扱ったりする権利という概念(がいねん=考え)が生まれます。

ICCの持つ一番大きな役割─というか狙い─は、実はこれなんです。

つまり、ICCが管轄(取り扱う)3つの犯罪について、この普遍的管轄権を成立させてしまおうと、こういうことなんです。ICCでも、ICCに賛成する国ならどこでも、この3つの犯罪を扱えるように、管轄できるようにしちゃうんです。

これは、言葉でいうと簡単に聞こえるかもしれませんが、本当にすごいことなんです。なぜなら、普遍的であるためには、全世界の国々が、ICCに賛成しなければいけないからです。それを、ローマ規程は実現するポテンシャルを持っているんです。そしてそこが、ローマ規程の素晴らしいところなんです。わかってもらえましたか?

ローマ規程が完全に機能すれば、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪といった3つの犯罪は、いつかなくなるかもしれないんです。この可能性に、全世界が期待を寄せているわけです。素晴らしいでしょう?

解説その4!『ローマ規程』の機能って?

●ローマ規程の役割:補完性の原則

ローマ規程には、前に説明した「免責の穴を埋めること」という役割のほかに、重要な機能があります。それはローマ規程に批准するために、締約国(ていやくこく=参加する国)がローマ規程と同じ法律を国内でも作ることを広げることにあります。なぜこうなるのか、その仕組みを説明しましょう。

ローマ規程はルールブックです。その主な役割は、「免責(めんせき)の穴を埋める」ために、3つの犯罪を裁けるシステムを作り上げること。このルールに賛成する国(締約国)は、このルールを守れるよう、国内の法律を変えたり、合わせたり、新しく作ったりする必要があります。簡単にいうと、3つの犯罪を、ICCでなくても国内でも裁けるようにしてしまうんです。「あれ、それじゃあICCは必要ないじゃん」と思うでしょう?ところが、違うんです。

日本のような独立した国家には、主権(しゅけん)というものがあって、それは国際的に、国家に認められた権利です。この主権によって、国家には独立した司法管轄権(しほうかんかつけん)、つまり、「自分たちで作った法律を自分たちで実行したり守リ抜く権利」を持ちます。

ICCは、こうした国家のもつ主権を補完(ほかん)するシステム。つまり、足りないところを、補って(おぎなって)あげるシステムなんですね。これを、ICCの「補完性(ほかんせい)の原則」といいます。ICCは国家の主権を越えたりしない。でも、足りないところを補うことはできる。そういう、システムなんです。

ICCの締約国は、ICCが自分の国の主権を補完することを、前もって認めています。それが「批准」するということですから。つまり、どうしてもICCと同じ法律が作れなくても、その場合はICCが、かわりにやってくれるということなんですね。この仕組みがちゃんと機能すると、どうなるか。わかりますか?

そう、ICCと国家の両方によって、免責の穴が埋められるのです!

ICCだけでは、いくら国際条約でもすべてに単独(たんどく=自分だけ)で対応することはできません。国家も、単独ではすべてに対応することは不可能です。だから、ICCと国家がお互いに補完し合うことを認めあうこと(=補完性の原則)で、ICCはひとつの大きな仕組み、「システム」を作り上げるのです。

この補完性が機能するシステムがある状態のことを、普遍的管轄権(ふへんてきかんかつけん)の成立した状態といいます。これこそが、ローマ規程の狙いなんです。

次回は、この狙いについてもっと詳しく説明しましょう。

解説その3!『ローマ規程』の中身は?

●ローマ規程の中身

ローマ規程に参加する国(加盟国、もっと正式には、締約国〔ていやくこく〕といいます)は、3つの国際的な犯罪について、これを罰することを約束します。また、この3つの犯罪については、ローマ規程によって設置される国際刑事裁判所(ICC)で裁くということについても、締約国は同意します。この三つの犯罪とは、(1)ジェノサイド、(2)戦争犯罪と、(3)人道に対する罪です。

どれもヒドイ犯罪で、本当なら今までもこの犯罪が行われたら罰しなければならなかったのに、色々な理由から、今までは、そうすることができなかった犯罪です。一つ一つ、簡単に説明します。

(1)ジェノサイド
ジェノサイドとは、1つの民族を絶滅(ぜつめつ)させるために、その民族の人を殺したり、傷つけたり、強制的に他の場所に移動させたり、子どもを作れないようにしてしまう犯罪を指します。他にも「大量殺害」という、ものものしい名前で呼ばれることもありますが、必ずしも「殺害する」という行為だけが問題ではないので、「ジェノサイド」あるいは「せん滅」と呼ばれることのほうが多いです。

(2)戦争犯罪
戦争中に行われる犯罪を指しますが、主に戦時国際法(せんじこくさいほう)という、戦争中のルールを破る犯罪行為のことを意味します。戦争犯罪には色々あるのですが、たとえば、軍人じゃない人(文民といいます)をわざと狙って殺してしまったり、文民が住んでいる住居を狙って攻撃したりすることは、戦争犯罪と考えることができます。他にも沢山、戦争犯罪を作り上げる要素というものがあるのですが、基本的に戦時国際法に違反(いはん)する行為は、すべて戦争犯罪と考えていいでしょう。

(3)人道に対する罪
この犯罪は、戦争中でなくても行われる重大な犯罪を指します。たとえば、多くの人に対する計画的な拷問(ごうもん)とか、強姦(ごうかん)とかの性的な暴力がこれに含まれます。また、ジェノサイドと同じように「せん滅」という行為もこれに含まれますが、ジェノサイドと違うのは、ある民族を絶滅させるために行われた行為かどうか、というところです。戦争犯罪と同じように、強制的に人を移動させる強制失踪(しっそう)という罪もあって、いわゆる拉致(らち)がこれに当てはまると言われています。

これら3つの重大な罪について、世界は、これまでちゃんと犯罪者を裁くことをしてきませんでした。その結果、これまで多くの罪のない人が、死んでしまったり傷つけられてきたのに、これらの犯罪を行ってきた犯罪者たちは罰せられないで、放っておかれてきました。これを「免責(めんせき)の穴」といいます。

免責とは、つまり「責任を免除(めんじょ)する」ということ。責任を求めないことを意味します。いままではこの「免責の穴」あったため、世界は多くの人が死ぬのをただただ見守るしかありませんでした。つまり、不正義(ふせいぎ=正しくないこと)が行われているのを、ただ黙って無視してきたのです。

ところが、「このままじゃいけない」と多くの人たちが考え、この「免責の穴」を埋めるために、ローマ規程というルールブックが作られたんです。皆で考えて、作り上げたルールブックなんですよ。素晴らしいでしょう?

ローマ規程は「このままじゃいけない」と思う人たちが集まって、もっと世界をよくしていこう、人が理由もなく傷つけられたり、殺されたりしない世界を作ろうと、考えに考えた結果、生まれたルールブックなんです。このルールブックを守ることは、大切だと思いませんか?それが、ローマ規程が素晴らしい理由の1つなんです。

もちろん、他にも、ローマ規程が素晴らしい理由はありますよ。

それはまた今度、解説しましょう。

解説その2!「批准」ってなに?

●条約を「批准」するって、どういう意味?

国が条約に拘束されることを認めることを「批准(ひじゅん)」といいます。つまり、条約に書かれていることを守るということを、条約の他の参加者たち(加盟国)に約束するということです。

条約は、この「批准」する国が多ければ多いほど力を持ちます。なぜなら、より多くの国が、同じ条約に従うことになるからです。

つまり、1つの強いルールが出来上がるのです。

では、世界で一番力のある条約とは何でしょうか。わかりますか?
そう、国連憲章(けんしょう)です。国連を作った条約のことですね。

国連憲章には、現在192の国が批准しています。まさに世界最強の条約ですね。

ほとんど世界のすべての国が条約に批准しているので、国連憲章はとても強い力(拘束力)を持ちます。だから、世界では戦争や紛争が色んなところで起きているけど、日本や多くの国は、この条約に批准していることで、平和でいられるんですね。

国連憲章とは、そういう条約なのです。

では、話をICCに戻しましょう。

ローマ規程の力(拘束力)はどのくらいなのでしょうか。

残念ながら、ローマ規程は国連憲章ほど強い拘束力を持つ条約ではありません。ローマ規程に批准している国は、現在104カ国で、まだまだ全世界の国々がこの条約に批准していないのです。

さらに残念なことに、その批准していない国のなかに、私たちの日本や、アメリカがいるのです。日本やアメリカはひじょうに力の強い国なので、日本やアメリカが批准しないことで、条約の力が弱まってしまいます。世界中の人たちが、このことを心配しています。そこで私たちJNICCのような団体が、ローマ規程に批准してくれと、政府に対して運動を行ってきたのです。

でもなぜ私たちは、ローマ規程に批准してほしいと思うのでしょうか。
ローマ規程の何が、そんなに素晴らしいのでしょうか。

次回は、ローマ規程の中身について考えてみましょう。